鳴子温泉郷には300近くの源泉があり、温泉の11種類の泉質のうち8つがあります。
そもそも、温泉の定義は、温泉の保護等を定めた温泉法によると、
地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、次に掲げる温度または物質を有するものをいう(第2条第1項)。
1.泉源における水温が摂氏25度以上(摂氏25度未満のものは、冷泉または鉱泉と呼ぶ事がある)。
2.以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む。(含有量は1kg中)
1.溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000mg以上 2.遊離炭酸(CO2) 250mg以上 3.リチウムイオン(Li+) 1mg以上 4.ストロンチウムイオン(Sr++) 10mg以上 5.バリウムイオン(Ba++) 5mg以上 6.フェロ又はフェリイオン(Fe++,Fe+++) 10mg以上 7.第一マンガンイオン(Mn++) 10mg以上 8.水素イオン(H+) 1mg以上 9.臭素イオン(Br-) 5mg以上 10.沃素イオン(I-) 1mg以上 11.フッ素イオン(F-) 2mg以上 12.ヒ酸水素イオン(HAsO4–) 1.3mg以上 13.メタ亜ひ酸(HAsO2) 1mg以上 14.総硫黄(S)[HS-,S2O3–,H2Sに対応するもの] 1mg以上 15.メタホウ酸(HBO2) 5mg以上 16.メタけい酸(H2SiO3) 50mg以上 17.重炭酸ソーダ(NaHCO3) 340mg以上 18.ラドン(Rn) 20×10-10Ci以上 19.ラジウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上 |
また、環境省自然環境局が制定する行政指針(作成は公益財団法人中央温泉研究所)である「鉱泉分析法指針」によると、
「鉱泉とは、地中から湧出する温水および鉱水の泉水で、多量の固形物質、またはガス状物質、もしくは特殊な物質を含むか、あるいは泉質が、源泉周囲の年平均気温より常に著しく高いものをいう。」
「鉱泉」の定義としては25℃以下も含まれる。逆に「温泉」の定義には、25℃以下は含まれないが、水蒸気およびその他のガス(炭化水素を除く)も含まれる。ということ。
「鉱泉」の分類は、泉温による分類の他、液性(水素イオン指数:pH値)による分類、溶存物質総量または凝固点(氷点)によっての浸透圧による分類がある。
鉱泉が地上に湧出したときの温度、または採取したときの温度を泉温といい、次のように分類する。
泉温 | ||
---|---|---|
冷鉱泉 | 25°C未満 | |
温泉 | 低温泉 | 25°C以上34°C未満 |
温泉 | 34°C以上42°C未満 | |
高温泉 | 42°C以上 |
鉱泉の液性を湧出時の水素イオン指数(pH値)により次のように分類する
酸性 | pH3未満 |
---|---|
弱酸性 | pH3以上6未満 |
中性 | pH6以上7.5未満 |
弱アルカリ性 | pH7.5以上8.5未満 |
アルカリ性 | pH8.5以上 |
鉱泉の浸透圧を、溶存物質総量または凝固点(氷点)により次のように分類する。
溶存物質総量(g/kg) | 凝固点 | |
---|---|---|
低張性 | 8未満 | -0.55°C以上 |
等張性 | 8以上10未満 | -0.55°C未満-0.58°C以上 |
高張性 | 10以上 | -0.58°C未満 |
療養泉の泉質には主に掲示用泉質名、旧泉質名、新泉質名の3種類があり、温泉の紹介等で用いられる。新泉質名は、1979年(昭和54年)にそれまで用いられていた旧泉質名に代わるものとして導入された。だが旧泉質名のほうが分かりやすいこともあって、実際には両方が併用されている。
療養泉の掲示用泉質名(新泉質名)は、以下の11分類である。
泉質 | 概要 | 特徴 | 浴用の適応症 | 飲用の適応症 | 鳴子の温泉 |
---|---|---|---|---|---|
単純温泉 | 溶融成分(ガス成分除く)が、1,000mg/kg未満、泉温は25℃以上。 | ・アルカリ性単純温泉はpH8.5以上 ・刺激はマイルド ・適応・禁忌は一般的適応症・禁忌症に準ずる |
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 | ○ | |
塩化物泉 | 俗に言う「熱の湯」。 陰イオンの主成分が塩化物イオン。 |
皮膚に塩分が付着するため、保温効果・循環効果がある。 | 切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症、うつ状態 | 萎縮性胃炎、便秘 | ○ |
炭酸水素泉 | 俗に言う「美人の湯」。 陰イオンの主成分が炭酸水素イオン。 |
皮膚に角質を軟化する作用がある。 | 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風 | 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘 | ○ |
硫黄塩泉 | 陰イオンの主成分が硫黄イオン。 | 飲んで胆のうを収縮させ、腸のぜん動を活性化する。 | 切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症、うつ状態 | 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘 | ○ |
二酸化炭素泉 | 俗に言う「泡の湯」。 入浴すると小さな気泡が身体に付着する。 二酸化炭素を1,000mg/kg以上含む。 |
炭酸ガスが皮膚から吸収され、保温効果や循環効果が知られる。 | 切り傷、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症 | 胃腸機能低下 | ○ |
含鉄泉 | 鉄(Ⅱ)イオン・鉄(Ⅲ)イオンを合計で20mg/kg以上含む。 | 空気に触れると、さび色に変化する。 | 鉄欠乏性貧血 | ○ | |
酸性泉 | 水素イオンを1mg/kg以上含む。 | 酸性が強いと入浴で皮膚にしみ、口にすると酸味がある。殺菌力が強い。 | アトピー性皮膚炎、尋常性乾癖、皮膚化膿症、糖尿病 | ○ | |
含よう素泉 | ヨウ化物イオンを10mg/kg以上含む。 | 非火山性の温泉に多く、放置すると黄色く着色する。(日本はよう素の主要生産国)
飲んで総コレステロールを抑制する。(ただし甲状腺機能亢進症がある場合は注意) |
高コレステロール血症 | ||
硫黄泉 | 総硫黄を2mg/kg以上含む。 | 殺菌力が強く、皮膚の殺菌やアトピー原因物質を取り除く。 | アトピー性皮膚炎、尋常性乾燥、慢性湿疹、皮膚化膿症、末梢循環障害(硫化水素型の場合) | 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘 | ○ |
放射能泉 | ラドンを30×10-10Ci/kg(8.25マッヘ単位)以上含む。 | 温泉に含まれる微量の放射能は、炎症に効果的。 | 痛風、関節リウマチ、強直性脊髄炎など |